それでもアッヴィに期待する
みなさん、こんにちは!くまかぶです。
先日、僕の保有するアッヴィの株価が-16%程度急落しましたね。その原因は6兆円以上となるアラガン社の買収のためです。大体買収する側の株が急落し、買われる方は急騰するっていうのが、世の常なので、仕方がないと思っています。そして、巨大M&Aは製薬企業の生き残る術であるので、僕はまだまだアッヴィに期待しています。
そこで、今日はアッヴィ、ならびに製薬業界の今後について考えていきたいと思います。
余談ですが、僕は生命科学系の博士なので、薬がなぜ効くのかといったような話が好きなので、今日からしばらくは株の中でも特に、製薬、ライフサイエンスに絞ってブログを書いていきたいと思います。
それでは本題に入ります。
アッヴィ【ABBV】とはどういう会社か
アッヴィは2013年にアボットラボラトリーズ【ABT】から分社化したバイオ医薬品企業です。
2018年度の売り上げは327億ドルと世界8位の売り上げです。ちなみに1位はロシュで579億ドルです。
アッヴィの主力製品はヒュミラという関節リウマチの薬です。ヒュミラは世界一売れている薬で2018年の売り上げはなんと254億ドル!アッヴィの売り上げの8割近くを占めています。そんなえげつなく売れている薬を持っているアッヴィが、何故巨額買収などするのか、ということですが、これは製薬業界特有のある理由があります。
薬の特許は20年
医薬品には以下の4つの特許があります。
- 物質特許
- 用途特許
- 製剤特許
- 製法特許
この中で最も重要なのが物質特許です。
これは薬の有効成分がどのような物質なのかを規定する特許です。この特許を取ることができれば、他者は同じ物質を販売することができません。ただし、特許申請してから開発期間が10〜15年かかることもあり、実際に独占的に販売できるのは5〜10年程度しかありません。
そうするとせっかくのいい薬であっても儲けが少なくなってしまいます。
そこで大事になるのが、残りの3つの特許です。
例えば最初に胃がんの薬として売り出したけど、途中で肺がんにも効くと分かったら、肺がんに使用することもできるように用途特許を出します。
また、点滴投与だった薬を飲み薬に変えるなどの製剤特許や、製造法を変える製法特許を組み合わせて特許の延命をする事で、なんとか儲けようとするわけです。それでも特許が切れると後発品の薬が出てくるというわけです。
じゃあ、ヒュミラはもうすぐ特許が切れるから、巨額買収するんだなと思いますよね。でも、実はヒュミラの特許期限は2016年でした!
あれ?特許切れたのにめっちゃ売れてるやん?!
なんで??
バイオ医薬品は同じものができない
バイオ医薬品とは主に抗体(タンパク質)医薬のことで、病気の原因となるタンパク質に結合することで、そのタンパク質の働きを抑えることができます。
ここで疑問なのは、一般の風邪薬などの薬とどう違うのかです。
風邪薬などのよく病院で処方される薬は低分子医薬品と言って化学合成によって作られます。その一方で、バイオ医薬品は細胞で合成されます。
ヒュミラは抗体医薬なので、タンパク質でできています。つまり、細胞から合成されます。
細胞からタンパク質を合成する時にはタンパク質の設計図となる遺伝子が必要です。
そして、その設計図となる遺伝子の情報は公開されていません。また、どのような細胞で作るかによって、タンパク質の修飾が変わってきます。タンパク質の修飾によってタンパク質の機能が変わります。そして、どの細胞で作るかも公開されません。つまり、バイオ医薬品の特許が切れたからと言って、すぐに同じ効果を持つ後発薬(バイオ医薬品の場合はバイオシミラーと呼ぶ)はできないのです。
また、アッヴィは米国において訴訟により、ヒュミラの売り上げを伸ばす、あるいは落とさないように頑張っています。
これらが、ヒュミラの特許が切れてからも売り上げが十分ある理由です。
ただし、いつヒュミラと同等なバイオシミラーが出てきてもおかしくないので、注意は必要です。
ヒュミラはまだ主力であり続けるが、いつ売り上げが落ちるかわからない。
ということは、アッヴィが巨額買収に出た理由は…
パイプラインの充実
パイプラインの充実こそが今の製薬企業にとって最も難しく最も大事なことです。
近年はどんどん薬が出にくくなっており、そのため開発コストもどんどん上がっています。
そのような状況で簡単に製品を出すために出来ることは既にある製品、パイプラインを買うことです。
アッヴィはアラガンの買収によりパイプラインの充実を図ったのでしょう。
では、アラガンのパイプラインを見てみましょう。
下図はアラガンHPから引用してきたパイプラインラインです。
中枢神経系、眼科、美容医療の領域ですぐにでも売り出せるような薬がいくつもあります。
これらのパイプラインによってヒュミラに次ぐ稼ぎ頭を創り出したいのでしょう。
また、アッヴィはアラガン社のパイプラインの領域にあまり強くありません。つまり、アッヴィは今回の買収により、より多角的なパイプラインを築くことができます。
つまり、アッヴィはアラガン社の買収により、ヒュミラがいつダメになっても大丈夫なように、あらゆる領域にパイプラインを持つことを選んだと言えるでしょう。
近年、製薬業会では領域の集中を行う企業が多いなか、アッヴィは違う戦略を取りました。
また、ヒュミラの売り上げが落ちる前に手を打ったことも評価できると思います。
これが吉と出るか凶と出るかわかりませんが、僕としては他社と違う戦略をとったアッヴィの姿勢に期待したいです。
それでは、アッヴィの株価回復を期待して、さようなら!